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プライドとは何のためにあるのか:フェアリーバンドの一斉退団に対して思うこと

 

さて、地区予選の真っ最中ですが、ちょっと不穏な出来事があったのでこちらを先にします。

 

先日の北西地区予選にて2位を取り決勝へ進んだフェアリー・バンド。

しかし一昨日10日、音楽監督であるギャリー・カットの辞任が発表されました。

https://www.4barsrest.com/news/39092/cutt-resigns-from-fairey

 

この時期に!?と驚いたのもあるんですが…この記事、何かおかしいんですよ。

 

普通こういう記事って、退団する人とバンドの両方のコメントがあるんです。

で、大抵は退団する人は「素晴らしい〇年だった」とか、バンドは「素晴らしい指揮者と過ごせて最高だった」とか書いてるんですけど…この記事、指揮者側、ギャリー・カットのコメントしかない。

 

ということは、この記事はフェアリー・バンドが出したものではなく、ギャリー・カット個人が出した記事。

 

しかも、書いてある内容が不穏。

「…but it seems others did not share my view that it also required a renewed level of determination and application to do so on that long term basis.」

 

この文、要は「私はもっとバンドのレベルを押し上げたかったが、私の要求にバンドが応えなかった」という。

そして最後の一分。これもギャリーの言葉なんだけど

「They are a band with a great name, but one that needs to renew its determination to remain so.」

 

「フェアリー・バンドは輝かしい経歴を持ったバンドではあるが、それを維持する思いを持つ必要がある」。

 

…要はバンド側から実力を上げようという意思が見えなかったから辞任した、ということ?

 

というかイギリスって本音と建前の使い方が日本以上に強くて、普通バンドを去る時にこんな批判めいた事を書かないんだけど、よっぽどだったのだろうか。

 

…とか思ってたら昨日(11日)、こんな記事が

 

https://www.4barsrest.com/news/39094/quintet-of-leading-players-leave-fairey-following-cutt-departure

 

プリンシパル・ポジションの奏者が5人まとめて退団。

え、やばくない?

 

プリンシパル・コルネット

ソロ・ユーフォ

ソプラノ・コルネット

フリューゲル・ホーン

ソロ・ホーン

 

全員、バンドの核とも言えるパートのトップ達がまとめていなくなる。

え、やばくない?

 

 

でも、フェアリー・バンドってこういうの起こるの初めてじゃないんだよね。

2013年にも起きた。

 

そう、私もその時フェアリーを去りました。

 

自分は9月のブリティッシュ・オープンが終わった後に退団したんだけど、それを皮切りに9月~10月にかけてバンドの半分がいなくなった。

テナーホーンとか一瞬にして全滅。

 

…他の人が辞めた理由はわかりません。

ただ、ギャリーの言葉にあるように、当時のフェアリーが「今以上に上に行くこと」が見えなかった状態でした。

 

誰が指揮者をやっても、厳しく要求しても”暖簾に腕押し”。

コンサートによっていつもとは違う指揮者が振ることがあるんだけど、誰がやってもなんかバンドが指揮者に反応しない。ただ楽譜の音を吹いてるだけ。

 

 

一回フィリップ・マッキャンが指揮することがあって、その時のリハーサルでフィリップが怒った。

 

「なんだその音は!!もっと音楽をやりなさい!!君たちは”あの”フェアリー・バンドだろ!!」

 

 

そのあとはバンドも非常にキリっとして、コンサートの演奏も良かった。

しかし、バンドがフィリップを再び呼ぶことは無かった。

「彼のやり方はオールド・スタイル過ぎる。リハーサルで怒らなくてもいいじゃないか。」それがバンドの複数の人間から出た言葉だった。

 

 

もう一度言うと、今回の大量退団の原因は私は知りません。

上の記事でも「色んな理由で」としか書かれていないし。ただ、

「The fundamental issues which had been raised over a prolonged period of time were stopping the band from reaching its full potential.」

 

「長期に渡って起きている根本的な問題は、バンドの最高のポテンシャルを発揮することを阻害した」

これが退団する人たちから、公式で出てくる言葉。

 

7年前と同じようなことが起きてんのかなぁ、というのは想像できます。

 

 

「プライド」とは何のためにあるのか?

「自分(たち)は○○だ」という自負は、何なのか?

 

個人的な考えを書くと、「プライドは方向性を誤ると大変なことになる」ということです。

 

「自分(たち)はこれを長くやってきた」

「輝かしい歴史がある」

「いち早く始めた」

 

このプライドを「自分たちに向けて」発し、その結果「だから自分たちは高いレベルにいなきゃダメなんだ」と自分に発破をかけるために持っている間は、うまく作用します。

 

しかし、それを「外側に向けて」、「俺らはこういうことやってきたぜ。凄いんだぜ」という態度を自分以外の者に見せると、プライドがそれ以上の押し上げを邪魔します。

 

国が違えど、人が違えど、プライドの作用を誤ると、崩れる時に一気に崩れます。

 

だから、プライドは自分だけに向けましょう。

他人に発して、楽な方に逃げるために使わないように。